機嫌が良いのか、鼻歌が聞こえてくる。
誰もが一度は聞いたことのあるメジャーな曲というチョイスではない辺りがあの人らしいなと思う。
けれど、これはなんの歌だろう。
聞いたことのあるような、ないような。
記憶力はある方だと自負している分、ご機嫌な歌が更に気になってしまう。
声が聞こえる方へ。
水音も聞こえてくる。
浴室のドアの向こうに影。
「ねえ」
シャワーが止まったタイミングでドアを開ける。
泡立つスポンジを手にしたままの彼が驚き跳ねて、目を丸くした。本当に猫のようだ。
「『世界の終わりに君と』なんて、なんの曲?」
「え?……えぇ?」
首を傾げ始めた姿を見るに本当に無意識なのだろう。
お邪魔しました、とその場を後にする。
そうして戻ったリビングでふと思い出す。
あれは彼のオリジナルだと。
6/7/2024, 2:43:01 PM