聖夜だと言うのに、両親は帰ってこない。
我が家にはサンタは来ない。厳密には、"サンタ代理"としてクリスマス前からプレゼントを親から渡される決まりになっている。だから、今この時点でプレゼントが来ないことを嘆いている訳ではない。
真冬の雪が厚い上着に乗っている。家に帰っても誰もいないから、ひとりで公園で遊んでいた。
…ひとりには慣れている。僕には親友がいる。
カードの向こうで笑っている、悪魔の親友がいる。
このカードを見ていると、なんだか懐かしい気がする。それと同時に、どこか安心するのだ。まるで、本当にそこにいるみたいに。
窓を見ると、外はすっかり暗く沈んでいた。子供の自分は寝る時間だ。
暗い自室のベッドに潜り込む。
…どうにも不安で眠れないことなんていつもの事だ。
寝返りを打つと、目線の先にはクローゼットがあった。外国では、クローゼットにモンスターが潜むといういわれがあるらしい。
僕にとっては、モンスターは友達だ。
布団から這い出て、カード…親友を手に取り、もう一度ベッドへ入る。さっきよりも安心する。
「おやすみ、⬛︎⬛︎⬛︎」
そう言って僕は目を閉じた。
………………
………暖かい。
両親が帰ってきた?…いや、それはありえない。
じゃあ、この温もりは……
眠気覚めやらぬ瞳が捉えたのは、親友だ。
実在している、そこに存在している。
そのまま眠気には勝てず、気づけばまた夢の世界へと沈んでいた。
その日見た夢は、まるで見た事のない場所の夢だった。
白い神殿の真ん中にある、美しい泉。射光が泉の表面をきらきらと照らしている。
そこにいるのは、僕と同じ顔をした少年。隣にいるのは、知らないだれか…
不思議とその夢は、まるで本当にあったことのように忘れられない。脳にしがみついている。
目が覚めた時、目の前に親友はいなかった。しかし確かに、そこに温もりがあった。
両親は今日も帰ってこない。それでも、僕には親友が居る。これからもそれは変わらない。寧ろ、これまでよりも強く親友を想えるようになった気がする。
カードを眺めた。
不思議な夢だったが、あの胸を刺す暖かさを忘れることはできなかった。
《遠い日のぬくもり》
12/25/2025, 10:05:59 AM