かたいなか

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仕事の帰り。学生時代の二次創作仲間と再会して、久々に緩めた財布の紐。夜の焼肉屋の奥の個室。
「まだ続けてるの、T夢」
「やめちゃった。呟きに上げてたら、知らないひとにカイシャクガー爆撃されて。何年前だろう」
初めてのオフ会、ここに建ってたカラオケだったねと懐古に笑う、昔々物書き乙女であったふたりが、
豚トロをつまみカルビを敷いて、申し訳程度の野菜を、ジョッキの隣に待機させている。

「そっちは?サイト無くなってたけど」
「概念アクセに引っ越した。カプも原作の名前も書かないで、黒白チャームですーって。好きな子で想像してくださーいって。誰でもないから指摘も来ない」
「便利」
「うん便利」

「自分の好きを欲望マシマシで書いただけなのにね」
なんでそれを、他人に批判されるんだろうね。
カリカリの鶏皮を突っつくかつての夢物語案内人に、
「きっと欲望マシマシだからだよ」
元薔薇作家が、妙に真面目な火照り顔で語った。
「こっちが塩だから、向こうのタレと合わなかったんだよ。塩分過多で、ぶつかっちゃったんだよ」

「どゆこと」
「分かんない」
「酔ってる?」
「酔ってない」

3/2/2023, 12:17:45 AM