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【誇らしさ】

自分に自信を持てと言われると、そんな無茶なと思う。

重ねてきた年数の割にしては、それなりにいい人生を送ってきた気がする。
テストは前日に勉強をしただけで二十位以内には入れたし、ずっと学級委員もしていた。まあまあ仲の良いクラスメイトに印象を聞くと、真面目やら何やらの単語が返ってくる。そしてそれに、大きく反論出来ない自分もいる。

どうやら自分は思っているよりも器用らしいというのは最近気が付いた。
細かいことが得意という技術的な器用さもあるが、対人が案外得意だった。人見知りなくせににこにこ笑顔で口数は絶やさない、なんていう変な器用さも見せていた。自分でから意見やアイデアを出すのも、どちらかと言えば得意な方だった。

自分の、世間一般的に言われる優秀な部分というものが他人に見られてしまった時、どうしようもなく狼狽してしまう自分がいる。
期待されると、それを超えないといけない。
最初はぴょんと頑張れば超えれていたものも、やがては高くなりすぎて届かなくなってしまう。脚力にはどうしても限界がある。努力しても、努力しても超えられない壁というものがある。

百点のテストを取ったことがある。
褒められた、次も頑張ろうと思った。次もやらないといけないというどこか脅迫じみた思いが自分の中に油性で書かれて、消えなくなってしまった。
委員会で先生に頼られた。
頑張ろうと思った、でも、期待という重りが頭にズシンと乗った気がした。それは、その時の自分には抱えきれないほど重かった。

そういったものの積み重ねだった。落胆が怖い。今まで積み重ねてきたものが一つの失敗で全て無しになってしまうのが怖い。
そうなったら、今までの大事に崩れないように気をつけて積み上げてきた人生のピースが欠けてしまうような気がした。

褒められて、認められて、嬉しく思っても、次の日には過去になっている。
崩されるかもしれない、ピースの一つになっているのだ。


誇らしさってなんだろう。
少なくとも私は、自分に誇らしさは持てない。
だって、持ってしまったら怖いから。
壊されるんじゃないかって、壊してしまうんじゃないかって。

8/16/2024, 4:49:02 PM