君の歌がどうしても羨ましかった僕は、君の歌を僕の物にした。
僕が唯一得意とする魔術でそれが可能なんだと知ったとき、僕は嬉しくてしょうがなかった。君の歌を奪って、ついでに──誰からも必要とされない、僕を捨てればいい。
僕と違って君は、誰からも愛されていた。君の歌を愛さない者なんていなかった──そうやってこれまで、たくさんの人に愛されながら生きてきたんだろう? 僕にもそれを、分けておくれよ……!
そして僕は、禁呪を使った。
君の体から君の魂を追い出し、そこに僕の魂を憑依させることに成功した。
君の歌を歌っているのが、君の姿と声を得た僕だなんて誰も気づかない、つまり──君の歌はすっかり、僕の物になったのだ。
みんなが僕の歌を褒めて、必要としてくれる……ああ、なんて幸せなんだろう!
……なのに。
少しずつ、本当に少しずつ、人々は僕から離れていった。僕には、僕の歌では、それを止めることが出来なくて……どうして? 同じ声で、同じ歌い方なのに。前の方が良かった、って……どういうこと?
なにも変わってなんかない。
変わったのは──魂、だけだ。
まさか──『君が紡ぐ歌』が人々に愛されていたのは、君のその、美しい魂のせいだったというの……?
「うーん。ボクの魂が美しい、とか……それは、どうなんだろ? そんなことよりさ、ちょっと提案があるんだけど、聞いてくれる? それをやればきっとね、もっといい歌になるはずなんだ!」
いまもなお僕のかたわらに在る君のゴーストが、そんなふうに言う。
「じゃ、特訓しよ? 大丈夫、キミなら出来るから!」
そうやって君は──いとも容易く僕を許し、僕の未来を信じてみせるのだ。
10/19/2025, 2:44:14 PM