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「仕方ないことだったのよ。私も悪いところがあったから」

 そんな、私にとっては軽すぎると思える一言で、あなたはあの人を許してしまった。
 いまさら言ってもしょうがないって。もう過ぎてしまったことは戻らないからって。諦めの言葉を残して、戦うのを止めてしまった。
 小さく丸まったその肩に、力をなくしたその拳に、私は叫びたくなる。

「嘘つき! 許してなんかないくせに! アイツが悪いと思ってるくせに!」

 理不尽に踏みにじられた心を、なんであなたが守ってやらないのか。涙をのんで、無理やり笑って、そのたびズタズタに切り裂かれる心に気が付かないのか。

 馬鹿野郎。わかってるよ。
 自分の馬鹿さも、無力さも。私も誰かさんみたいに口がうまけりゃな。あの子みたいに器用に立ち回れたらな。最初から生まれる場所が違ってりゃこんなことにはならなかっただろうか。

 でも、でもしょうがないじゃないか。私は私に生まれたんじゃないか。しょうもない私だけど、この世でたった一人の私に生まれたんじゃないか。

 私は許さない。全身全霊あの人を憎んでやる。私の中の真実を失わせたりはしない。
 そうだ私があなたの最後の希望になってやる。

3/3/2024, 6:19:00 AM