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 商業施設の屋上に庭が作ってあった。中に入ってみると、木に緑色の丸いものがたくさんなっている。近づくとリンゴだった。こんなところに? ビルとリンゴ? 不思議な気分になった。リンゴはまるまるとして生命力にあふれている。

 まだ日差しも強く、半袖を着ていた。目の前を何かが横切った。トンボだ。奥の一角にトンボがたくさん飛んでいた。そこには、もふもふの緑の毛玉や、ふさふさのついた秋の草が生えている。トンボは上下したり、回ったりして楽しげだ。

 植物や虫は、どうやって秋の訪れを知るのだろう。かすかな大気の移り変わりでわかるのだろうか。日がかげると、清々しい風が腕に触れる。そろそろ長袖かな。生き物たちより少し遅れて、秋の準備を始めてみることにした。

「秋の訪れ」

10/2/2025, 6:22:29 AM