佐倉光潤

Open App

「同情」

「同情してほしくないから話せなかったんだよ」

幼なじみのさっちゃんは続けて言う、

「コウちゃんは優しいから親身になってくれる。
でも、どこかで私のこと憐れんだでしょ?
可哀想なさっちゃんって思ったでしょ?」

すぐに言葉では否定も肯定もできず、
力なく黙ったまま首を振る。

「…コウちゃん、もう友達でいられないね」

さっちゃんが悲しげに、告げてくる。

「なんで!?私に悪いところがあるなら、謝るし、
ちゃんと直すから。だから…」

言葉を遮るようにさっちゃんが言葉を被せてくる。

「コウちゃんは、悪くない。謝らなくていいの。
ただ、可哀想って一瞬でも思われちゃったって知って、
心の狭い私は、許せないだけ」

さっちゃんは、悲しげに、でもハッキリと告げてくる。

「可哀想って思われるような私じゃなかったら、
ずっと友達でいられたのにね。ごめんね?」

首をコテンとして、可愛らしく微笑むさっちゃん。
きっと、一瞬も可哀想なんて思ってないと断言しても、
そう思ってごめんなさいと謝っても、どうしたって
さっちゃんとの友人関係はこれで終わってしまう。

それならば、最後までさっちゃんに対して、
私は、正直でありたい。

「…私が悪くないなら、さっちゃんはもっと悪くない。
…さっちゃんも元気なばあさんになりなよ?」

そう言って私は、涙を見られない内に
コーヒー分のお金を置いて去ろうとした。

「ねえ、コウちゃん。今日という最後の日に、
一緒に通ってた小学校の通学路、通って帰らない?」

振り向くと昔から見飽きるぐらい一緒にいた
さっちゃんが、泣いていた。

「…うん、もちろん」

2人で泣きながら思い出話しながら帰って、
いつもの交差点で別れた。
振り返らなかったから分からないけど、
きっとさっちゃんも振り返ってないと思う。

どうか、これからのさっちゃんが幸せであればいい。
元気に過ごして、ばあさんになっても、
幸せでいてほしい。
そう願える幼なじみを失った日。

2/20/2024, 12:44:13 PM