時雨 天

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君の奏でる音楽






窓が開いているので、風が入り、白いカーテンを揺らす。
俺は椅子に座りながら、彼女が弾くピアノの音に耳を傾ける。
タイトルは忘れたけど、彼女自身が作曲した曲らしい。
心地よく、日々のストレスが癒やされていくような気がした。
目を瞑って曲に乗りながら弾いている姿。長いまつ毛が印象に残った。
長い黒い髪の毛には、艶があり、日々手入れをしているのであろう。
太陽の光が当たるとキラキラ光って、天使の輪っかができていた。
ピアノを弾く手が止まり、こっちに顔を向ける彼女。

「私の顔に何かついている?」

「いや、別に、ピアノは癒やされるなぁーと」

「ピアノ、弾けないくせに」

クスクス笑って、椅子から立ち上がり、俺のところまできた。
相変わらず整った顔をしている。桜色の唇に目がいく。
ぼーっと見つめていると額を細長い指で弾かれた。

「何考えているの?」

「……別に」

少し痛む額を摩りながら、そっぽうを向いた。
また彼女は笑う、よく笑う。この笑う声は、ピアノとはまた違う音を奏でている。
これも心地がいい。自分の心がふわふわと揺れ動いているのがわかった。

「うそつきー、絶対何か考えているでしょー」

「特に考えていないから」

つんつんと頬を突いてくるのを手で払いながら答えた。
嬉しそうな表情をする彼女。嫌なことを吹っ飛ばしてくれる。
ピアノの音と共に。彼女の奏でる音楽は、俺の癒しだ。

「さーてと、続きを弾こうかな」

俺の目の前で、両手を組んで上へぐーっと伸びる。
そして、またピアノへと戻って行った。
席に着き、指を鍵盤の上へ置くと目を瞑って、小さく息を吸い込んだ。
またこの空間に音が奏でられる。――ようこそ、彼女の奏でる音楽の世界へ

8/12/2023, 11:51:06 AM