最高級品の和紙に文鎮を置き、硯で墨を磨る。
墨汁は便利だが、硯で磨った墨には敵わない。
筆に墨を吸わせ、硯の端で墨を拭う。
一文字、一文字、集中し過ぎないよう意識しながら、文字を書き連ねる。
そして、和多志の名を署名し、筆を置く。
最後に、玉印に朱肉を付け、署名の下に玉印を押す。
之で終わり。
重要書類を書いた後は、どっと疲れる。
之ばかりは、未だに慣れない。
窓から外を見ると、日は沈みかけ、空を朱く染めていた。
『たまには早く帰って、家族と過ごせ。そう云う時間は、無限では無いよ。』
上司に云われた言葉を思い出す。
今日は、早く帰ろう。
12/7/2023, 11:46:30 AM