黒山 治郎

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昼はつまらない事なのに
夜はどうしてこんなにも

真夏の湿気を含んだ生ぬるい夜風が
暗がりを照らす電灯と自販機のノイズが
急に夜闇を割いて飛び込んでくる車の轟音が
自分しかいないと錯覚させるアスファルトの道が
電気の灯りきらない薄ら寒い田舎の町並みが
嗤う様に緑が揺れる並木達のざわめきが
綾取りの如く絡まり合う電柱の線が

どうして、こんなにも
心に波を打つのか。


全貌の視認が容易いと
いつしか黙認してしまう
そこにあってしかるべき物
見慣れる度に自然とつまらない
粗末な事と意識は自ずと切り離す

それらを夜の帳が覆い
切り取りを強制する事で
予測が不可能な事柄となる
予兆少なに露わになるモノは
途端に幾つもの想定へ変化する

陽を喰らう周囲の暗さは恐怖心を舐め
我々の想定にも光が灯る事は少ない
故に人は夜を恐れてきたのだろう
幾ら光を灯し夜を拭おうとしても
我らは夢へと潜り込む他ないのだ
“今夜”が、また明けるまでは。

ー つまらないことでも ー

8/4/2024, 8:37:40 PM