「父さま、お伝えしたいことがあります。」
「なんだ。」
私は、喉の渇きを少しでも癒すために唾液を飲み込んだ。
「私は家を離れ、婿として他家に嫁ぎたいと考えています。」
指先が震えてきた。
「何故だ、己の立場を理解しているのか。」
父さまの威厳ある声が響く。
「私が家の流れを汲む、嫡男であることは理解しています。
しかし、この家を継ぐことが出来るほどの器は、私に在りません。
それ故、他家に嫁ぎたいと存じます。」
父さまの反応を伺う。
「己の器をその年で理解するか。
己の器を理解出来るほどの頭を有しながら、
他家に嫁ぐとは、何と惜しいことだろうか。
これも、きっと天の思し召しか。
良かろう、ならば他家の婿養子となり、生涯を全うせよ。」
父さまは、冷静に名残惜しいそうに私を見つめた。
「感謝致します。この御恩は、生涯忘れません。」
私は頭を深く下げた。
これが我が家の流れ、女系の始まりでした。
12/20/2024, 7:09:36 AM