「実は私は雪を降らせることができるんだ」
「またそんな事を……」
ボルは私に魔法の稽古をつけている間にもペラペラと話す。器用なものだ。
「……鬼神って知ってるか?」
「1番偉い鬼でしょ」
「反抗期ちゃんほんとざっくりとしてるよなあ……まあその認識でいいか」
おっと、とボルの攻撃を避け、反撃する……全然当たらないどうなってるんだ。
「その鬼神はアイシクルっていう特別な角を持っててさ、天気を自在に操れるんだよ」
パチン、と彼が指を鳴らす。途端に空から雪が舞う。
「……だから自分にもできるって?自信家だなあ鬼神に怒られて雷落とされればいいのに……」
「ははっ私は全て操れる訳じゃないけどね。雪は得意なんだ。こんな見た目だし」
ボルは真っ白い肌に真っ白の髪をしている。
「それあんまり関係なくない?」
「そうかもね。私なんでもできるし」
そしてそれから、初雪は彼担当になった。寒くなってきたねえ、と言っては雪を降らす。私は寒くなったからといって雪降らせなくてもいいんだけど、とツッコむ。
それは恒例行事で、私の中で冬の風物詩と化している。
ぅ、寒い……。
「お早うございます」
「うあ、寒すぎない……?雪降った??」
シンは窓の外を一瞥して視線を戻す。
「まだ降りませんね」
「そうかあ」
布団の中に戻ろうとしてシンに引っ張り出される。
「ワタシ久しぶりに夢を見てたよ。まだ初雪が近くにいたころの夢」
「……?そうですか、シューさんは詩人ですね」
ボルタミシェル、初雪の彼がいた時代はとうに過ぎ去り、ワタシは唯初雪を待つ。
12/15/2024, 10:33:22 AM