無音

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【56,お題:声が聞こえる】

「貴方って人は!また他の女と遊んだでしょ!?いくら使ったと思ってんの!」

「うっぜーなァ!お前こそ、たいして働いてもねーくせに!」

「なんですって!?そんなに言うなら離婚すればいいじゃない!」


パパとママ、きょうもケンカしてるなぁ...

閉じきった扉の向こうで響く、怒声と物音
電気も付いてない薄暗い部屋で、少年は描き上げた絵を片手に暇をもて余していた

『悠、今は向こうに行っちゃダメだよ』

「うん、わかった」

ほんとは、はやくママたちにみせたいけど、おにいちゃんがダメっていってるし...

「はやくケンカおわんないかな~」

『......そうだ悠、なぞなぞ好き?』

「んー、まあまあすき!」

『じゃあ、俺が出すから答えてね-』


少年には、不思議な声が聞こえる
初めて聞こえたのは、3歳くらいのときだろうか?

頭に直接響いてくる若い男性の声、親がケンカしている時の話し相手は決まって彼だった


『パンはパンでも食べられないパンはなーんだ』

「?パンはぜんぶたべられるよ」

『うーんw、そうだけど違うなぁw』


自分にしか聞こえない声、怖がらずに受け入れてるのはその幼さ故か
それとも、小さいながらに押し殺した心細さが見せた幻影か

「たべられないパンは、パンじゃないじゃん!」

『ブフッwww違う、wそうじゃないww』

どちらにせよ、関係ないことなのだろう今の少年にとっては

9/22/2023, 2:48:28 PM