「カーテン」
カーテンの向こう側から、すずが寝転びながらこちらを見ている。
正確には、見ている気配がする。私は今カーテンに背を向けて作業をしているので直接見えないが、先程そちらに向かうのを目撃していた。彼女の行動パターンはよく知っている。
気位の高い彼女は、構われたいときもおねだりをすることはない。カーテンは人質のようなもので、私に取引を持ちかけているのだ。
仕方ないなあ。私はもう少しで終わるはずだった作業の手を止めた。
「ほら、おいで」
振り返ると予想通りすずはこちらを見ていて、目が合うと、満足げに一声鳴いた。
7/1/2025, 7:43:59 AM