「私はきっと、天国には行けないね」
徐々に薄れていく意識の中、彼女が消え入りそうな声で呟いた。
たしかに、俺たちは大きな罪を犯してしまった。
けれどそれは、自分たちを守るために仕方がなかったことだ。
本当は、彼女はこんな最期を迎えていいような人間じゃないのに。
本当は、誰よりも優しくて、いつも人のために自分を殺して。
そんな優しさに漬け込んだ、アイツが悪かったんだ。
罪の重さに耐えきれなくなった彼女に着いてきたのは、世間が彼女を否定しようと、俺だけは彼女を信じていることを伝えたかったから。
……あぁ、そういえば、他にもまだ言えてないことがあったな。
「天国でも地獄でも、一緒に行ってやるから安心しろよ」
そう言うと、彼女は泣きそうな顔で笑った。
それが、最後の記憶だった。
お題『天国と地獄』
5/27/2024, 11:11:29 AM