今日は朝から憂鬱だった。何をするにもやる気が起きなくて、外は雨。雨なだけで憂鬱が倍増する気がする。
何気なしにスマホの画面をつける。パッと明るい画面は眩しすぎる。ニュースアプリを開いて流れてくるのは、やれ殺人だのやれ性犯罪だのやれ自殺だの。
「……はぁぁ…」
暗い気持ちに暗いニュースが追い打ちをかけて深く長い溜め息が出た。
生憎今日はバイトの日だ。重たい体を無理やり持ち上げて、支度を始める。朝ご飯も食べる気にならないし、髪も整える気にならない。
…朝食は抜きでいいか。髪も手櫛でいいや。
霧がかっている雨の中、傘をさしてとぼとぼ歩き出す。
「……ニャー」
淀んだ鳴き声がして前を見れば道のど真ん中に佇んでいる黒猫がこちらをじっと見ていた。
「…気楽でいいな、お前」
黒猫に近付こうとしたその時、キキーっ!と音を立てて車が黒猫に突っ込んだ。何事も無かったかのように走り去る車。目の前で消えた、黒猫。
さっきまでそこに居たのに。さっきまで、
…俺が来たから?そんな考えが頭をよぎる。こっちを見てたから、車に気付けなくて、
あいつの人生、奪ったんだ。あいつに家族居たかもしれないのに、俺が、
「……ふっ…おれ、」
来た道を引き返す。まだ朝早いし、きっとあの海には誰もいないだろう。
「…すぐ行くから」
出会いと別れは紙一重。こうも憂鬱な日は、自分が居なくなるに限る。
『突然の別れ』
5/19/2024, 10:44:51 AM