紫炉

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『どうして』

仕事が終わり、推しの配信を見ながら彼氏の待つ家に帰ると見たことの無いない赤いハイヒールがあった。私は派手な色は使わないから自分のものでは無いことが一目で分かった。そっか。分かっちゃった。最近冷たくなったのも、知らない化粧品や女物の服があったのも、スマホを持ち歩いたり隠すようになったのも、部屋に篭もるようになったのも、今まで読んでいることを嫌がっていた男の娘の、私の好きな漫画に文句をつけなくなったのも。そっか。私のせいだったんだ。
彼氏の部屋のドアをほんの少し開けると、そこにはよく知った顔があった。部屋に響く彼の声と、スマホから聴こえる声がとても尊く動画を撮る手が震えた。それと同時に言ってくれなかったことが悔しかった。私はまだ信用して貰えないのかな……。

1/14/2024, 11:31:19 AM