昨日と違う私
朝起きたら家に見知らぬ猫がいた。
母曰く、昨日私が連れ帰って来たそうだ。
スマホを見ると、バイト先の後輩から「昨日はありがとうございました。猫よろしくお願いします!」
とメッセージがきている。
さっぱり訳が分からない。
確かに昨日後輩から、友達が猫を保護したけれどずいぶん弱っていて、譲渡先を探しているうちに死んでしまった、という話を聞いた。
可哀想に生きてたら家で引き取ったのに、とも言った。
そしてそれきりだったはずなのだ。
「何なに?ボケたの?」
と弟が笑い、父は呻き、母は心配そうな顔をする。
皆が一斉にからかっているのでなければ、私だけが昨日とは違う世界線にいる。
そう、猫が生きていた世界線だ。
呆然とする私の前で、猫は黒い身体をぬぅぅぅんと伸ばし、図々しくも膝に乗ってきた。
そして、いいからもう黙ってなさい…とでも言いたげに、澄んだ黄色い目で私を見つめた。
5/23/2025, 12:51:03 AM