今日は、晴れ。
辺りは、もう暗く、まだ空の片隅は、西日の名残りがある。淡い朱色から、徐々に淡い藍色に変わっていた。
俗に云う、黄昏時である。
ちょうど今のような時から、私たちの仕事は始まる。
喪服に革靴、そして、白手袋をつける。最後は、入念に姿見を確認する。
私たちの仕事は、決して葬儀屋や火葬屋では無く、暗殺された死体を処理と後始末である。
遺体の状態に、部屋の状態などを細かく記憶し、主(上司)に伝えることまで私たちの役目だ。(資料には、決して残せないため)
先ほど述べた状態は、暗殺者の腕によって大きく異なる。
今回の現場は、『ウェスト』…西の死神と呼ばれる方の後始末だった。
此の方の特徴は、首の皮一枚だけ残し、斬首することだった。
そして、いつも遺体は穏やかな表情で、身体に傷跡などの抵抗した痕跡などは残されていない。
百を超える暗殺後の現場に立ち会ってきたが、ここまで遺体が美しい方は、他には…居なかった。
器物の破損や紛失などは無く、僅かしか散っていない血飛沫を、拭き取とり、消毒して、清掃は終了。色移りも無かった。
できるだけ、生前の彼らの暮らした家の状態に近づけることも、私たちの役目だった。
最後は、それぞれの遺体を棺桶に…。霊柩車で火葬場まで運び、其処からは別の役職の方々に繋ぐ。
それまでが、私たちの仕事。
世間的に、誉められる仕事では無い。
それでも…私からすると、自慢の誇れる仕事だった。
8/19/2023, 10:23:34 AM