「夏の気配」
僕は、冬が嫌いだ。
だって、寒いし…冬の初め、妹が死んでしまったのだから。
周りの皆んなは、雪だ!とはしゃいでいるが、ぼくは
妹の死に、気をお取られそれどころじゃない。
妹、夏ちゃんが死んだ。明るい子だった。優しかった。なのに…修学旅行で山に行って、雪崩に巻き込まれて、死んでしまった。
卒業した、姿を見たかった…もう一度でもいいから…あの笑顔がみたい。なんで、これから先、明るい未来がある、夏が死んでしまったのだろう。夏は、ぼくと違って良い子だった。死ぬなら、ぼくが良かった…なんで…なんで…なんで!!
まだ、雪が降っている。ぼくは、こんなにも、泣いて責めて苦しんでいるのに、僕の事は気にもせず無機質に雪がふっている…あぁ、なんでこんなにも、寒いのだろう
寒い…寒いすぎる…ぼくの夏は、どこに行った?
気づけば、マンションの屋上に来ていた。
ふと、周りを見渡せば、雪景色。
「綺麗だなぁ…」
柵に手を出して、飛び降りる準備をする。
お母さん、お父さん、今までありがとう。
ビュー
強いくて、冷たい風が僕に突き刺さる。
「これで、いいんだ…これで…」
「お兄ちゃん」
お兄ちゃんと、呼ばれた気がする。そんな事あるわけないのに、僕は後ろに向いた。
「お兄ちゃん、今日ね!お友達と公園行ってきたんだ!
寒かったけど、この寒さを忘れてちゃうぐらい楽しかったよ!」
ビュー
後ろには、何もない真っ白な景色があった。なにか、いるはずはない。つらいなぁ、変な希望を持ってさ…
夏は、死んだ。現実は、つらい。苦しい。悲しい。
「もう一度…ぼくの事を、お兄ちゃんと呼んで…」
あの日、ぼくの中から夏の気配がきえた。
6/29/2025, 8:34:46 AM