『やわらかな光』
更けゆく夜の空の高くに月が昇っている。眠っていたネコがぱちりと目を覚まし、外へ出せと鳴くので玄関の扉を開けたが、彼はこちらを振り向いて動こうとしない。お前も来いとの無言のご要望にお応えして月夜の散歩に出向くことにした。
銀色に光るススキの穂が揺れているのや、川面や屋根瓦に跳ね返る月の明るさを眺めているうちに先を歩くネコの姿が大きくなっていく。ツヤツヤとした自慢の毛並みは月の光に照らされて貝殻のような虹色に輝いていた。
「いい月夜だな」
「ほんとうに」
のっしのっしと歩くネコに並んで暖を取らせてもらいながらの散歩は続く。秋の夜には柔らかな光が満たされていた。
10/17/2024, 4:25:34 AM