濃い青色で晴れ渡る夏空に私は低く呻いた。記憶の中のあいつはそう、生気に満ち溢れていてよく笑っていた。海に行こうと私を誘う、賑やかな声が頭から離れてくれない。決まって麦わら帽子とサンダルを持って、私の周りをぴょこぴょこと跳ねるのだ。今日のような青空に麦わら帽子と白いシャツがよく映えていて柄にもなく似合っている、そう思った。あいつが海に攫われてしまって、でもあの夏の記憶は色鮮やかに思い出せるようで。手元に残った麦わら帽子も随分と色褪せてしまった。青空の日は頭の後ろが酷く痛む。記憶の中の私を呼ぶあの大きな声が頭に響く。あいつは今日もこの麦わら帽子を被り、あの笑顔とともに私の手を海へと優しく引いていく。
#麦わら帽子
8/11/2024, 11:54:25 AM