回顧録

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巷では俺とあいつはラブストーリーだなんて言われているらしい。汗だくになりながら頑張る俺を見て自分の気持ちに気づいたんだとか。まるで一昔前の月9だ。俺とあいつも無縁の。

そりゃそんな時もあったかもしれない。そんなベタな展開になっていたのかもしれない。なりそうだ、あいつはベタが好きというかベタな男だから。鈍感な主人公のように顔を赤らめて自覚したようなこともあったかもしれない。マジかよ…、とか独り言すら言ってそうだ。だがそんなものは昔の話で、もうとうにそんな最終章は終えてしまっている。

いつもの流暢な喋りはなりを潜めて、よかった、かっこよかったと大きな瞳を潤ませる。いつになってもかわいい、ただ画面を気にしなかったのが頂けない。お前の可愛さがバレてしまうではないか、最近漏れてきとんねん。40超えてから可愛さがバレるってどないなっとんねん。
腕の中に収めながら肩に頭を押し付ける。すると躊躇ったようにおずおずと手が俺の頭に伸び、さらりと撫で付けた。案外控えめで、それにキュンと来てしまう辺り俺も重症なんだろう。

「よくやりきりました、?もちろんやり切るとは思ってたけどな?でもすごい、誇らしい」

そんな風に手放しで俺を褒める。昔のあだ名のおまけ付きで。
気づくも何も俺がこいつを手放すわけが無い。


ラブストーリーの向こう側。

9/3/2025, 5:38:46 PM