ほろ

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暗い部屋に帰ると、親友が蹲っていた。
「びっ……くりした……」
電気をつける。蹲った親友が照らされる。私は親友の横を通って、バッグをリビングに置いた。

親友はよく、家出をする。実家暮らしなんて楽で良いじゃんと思うけど、実際は違うらしい。最初の頃、私が帰ってくるまで部屋の前で待っていたから、合鍵を渡した。それ以来、親友は一人暮らしの私の部屋によく転がりこんでくる。

「今度は何」
「…………」
「言いたくないのね。別にいいけど」
そこどいて、料理するから。そう言えば、親友は数センチ横にズレた。何も言わないのなら何も聞かない。昔から、私たちはそうだ。二人でいる時は、なんだか世界にふたりぼっちになったみたいで、親友の声がよく聞こえた。
「今なら私しかいないよ」
ふたりぼっちだから大丈夫だよ。
夕飯を作りながら言うと、親友の顔が少しだけ上がる。
「うん」
「で、何?」
うんとね、と話し始める親友の、鼻頭が赤い。

昔から変わらない。私たちの世界は時々、私たち以外の音が聞こえなくなる。それが、私は愛しく思うし、私しかいない世界の親友を守りたいと思う。

3/22/2024, 6:33:51 AM