明日世界が終わるなら
ある世界の、とある裕福と貧困の混ざった国で。
――明日は、この世界の終焉にして、黎明の刻である!
「裕福」に囲まれた王は、高らかに声をあげる。意味がよく解らない。
大人たちは、囁く。
「明日、世界が終わるらしい」
「なんで」
「王が、神の怒りに触れたとか」
「なら、なんであんな演説を」
「とうとう狂ったか」
「死にたくない」
そこにあるのは、困惑、憎悪、恐怖。
子どもたちも、囁く。
「ねえ、もしほんとに、明日世界が終わるなら。あたしたちはどうなるの?」
「元々、この世界は終わってる。今さらなんともない」
「それに、終わりがあるなら、始まりもあるでしょ。終焉と黎明って、そういう意味なんだって」
「へえ。物知りだね!」
「この世界、良くなるのかな」
そこにあるのは、諦めと、少しの期待。
案外、大人よりも子供たちの方が、よほど落ち着いていると言える。
さて、果たしてそんな彼らが、「終焉」という名の世界の終わりと、「黎明」という名の国の始まりに立ち合ったときには、どんな感情が生まれるのか。
答えは、神すらも知らない。
それが、人の世というものだ。
5/7/2024, 1:33:46 AM