ヒーローショーの始まりはいつも、怪人の登場からだった。
それを理解したのは、ヒーローショーを見に来て3回目の時。
初めて憧れのヒーローショーに連れて来てもらった時は、怪人の登場でパニックになり「怖い」とか「帰りたい」と、恐怖で手足を震わせて号泣しながら父に後ろに隠れてしがみつき、ヒーローが登場する前に、怪人の登場だけ見て、父に抱っこされてもなお号泣しながら会場を後にすると言う散々なヒーローショーデビューとなってしまった。
けれど、せっかくヒーローショーに来たのにヒーローを見られなかった心残りも有った。そこで俺は父に「怪人怖くても帰らない。最後まで見る」そう約束をして、2週間後に再びヒーローショーに連れて行ってもらった。
人生2回目のヒーローショー。やはり最初に怪人が登場した。それを見た瞬間、2週間前のヒーローショーで体験した怖い気持ちが蘇って怖くなって泣いてしまった。本当は直ぐにでも帰りたい気分だった。でも俺は、怖くて泣き、父の手を握りながらも父との約束を守る為、ステージをずっと見ていた。
すると、ヒーローの声と共にヒーローが登場した。それを見た瞬間、怪人が目の前に居るのに"もう大丈夫"と、疑いようの無い安心感が生まれ、気がつけば先程まで出続けていた涙はもう止まっていた。それからヒーローショーが終わる迄の時間はあっという間だった。
心の中で(ヒーローが絶対に助けに来てくれる)そんな安心感が生まれた2回目のヒーローショー。それにより俺はヒーローショーが好きになった。そして3回目ともなればヒーローが必ず助けに来てくれる安心感から、登場する怪人も怖くなくなった。それと同時にヒーローショーの流れも薄っすら理解した。
それからは毎週の様に父に強請ってヒーローショーに連れて行ってもらう様になり、中学生になってからはスーツアクターを志す様になって努力を続け、大人になった俺はプロのスーツアクターになった。
そんな俺の初めてのスーツアクターとしてのデビューは、初めてヒーローショーを見に来た施設で開催されるヒーローショーでの怪人役だった。
そう…ヒーローショーの始まりはいつも怪人から。ここからが俺のスーツアクターとしての始まりだ。
※この物語はフィクションです
始まりはいつも 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
誤字脱字を修正しました。
10/21/2024, 3:01:01 AM