短期間のうちにこうも殺人事件が頻発するとは、いよいよ世界の終末が近いのだろうか。
そして、逮捕された犯人は決まってこう言う。
『声が聞こえたんです、殺せ殺せ殺せ、と──』
それはもう犯人同士で示し合わせたように同じ発言をする。目の前にいる取調べ中の容疑者も例外ではなかった。
「そうやって精神異常者の振りをしていれば、罪が軽くなるとでも思っているのか?」
「気をつけてくださいね、刑事さん。この声、伝染りますから……」
話が噛み合わない。詐病などではなく、本当にこいつは精神に異常を来しているとでもいうのか?
その時、耳の奥で何か聴こえた気がした。
──気のせいではない。その音ははっきりと、そして明確な意味を持つ音声となって鼓膜を振るわせる。
殺せ、殺せ、殺せ──と。
声が響く度に頭が割れそうな程の激痛が走る。
これは……これは一体何なんだ?
どうにかしてこの苦痛から逃れたい。そのためにはどうすればいい?
……ああ、そうか。こうすればいいんだ。
私は苦痛から逃れるために、目の前にいる容疑者の首を明瞭な殺意を込めて強く強く絞めた。
テーマ【声が聞こえる】
9/22/2022, 10:56:00 AM