ほむら

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「あなたって、過去に戻りたいって思ったことある?」

生きている限り、過去の選択を後悔してしまうことは誰しもあることだろう。もし、あの時こうしていたら…考え始めるとキリがない。私も、消し去ってしまいたい黒歴史なんかたくさんあるし、時を戻せるならば後悔のない完璧な過去にしたくなるだろう。そこで、私からすれば完璧に見える彼に聞いてみた。

「それはありますが…戻れるわけでもないし、今のままがいいですね」

彼は少し考えるような素振りをして、そう答えた。後悔した事がなさそうな彼でもそう思うんだ、と意外に思いながらも、今のままでいいと言う彼らしい答えに少し安心してしまった。

「だよねぇ…過去のことを失われた時間だなんて、ネガティブに考えたことあんまりないし」

いくら黒歴史がある私であっても、それらを受け入れて今の自分があるのだ。楽しいことだけではなく、辛いこと、悲しいことも含めて人間というものはできているのだ。それに、とつけ加えて話そうとしたタイミングで彼も同時に口を開いた。

「それに、時間は失われても、思い出の言う形で残りますよね」
「あーっ!それ私も言おうとしてたのに…」
「おやおや、俺たちは以心伝心ですね」

セリフをとられてしょぼくれる私に、彼はクスクスと笑いながらそう言った。それでも、考え方が似ていたことは少し嬉しかった。もし、失われた時を求めて過去に戻っていたら、彼に会えないだろうなぁと思うと、私も今のままがいいと思った。

「これからも、たくさん思い出作ろうね」
「えぇ、あなたと過ごした時間の証をたくさん残しましょう」

テーマ「失われた時間」

5/13/2024, 11:41:54 AM