300字小説
精霊の森の守り人
『優しくしないで。短い時を生きる貴方に出来ることなんてない』
この精霊の森を、その主である私を守りたいと言った貴方の言葉を私はすげなく否定した。人の時は短い。なのに貪欲に生息範囲を広げていく。それを止められるものか。失望するくらいなら、期待などしない方が良い。そう冷たく言い放った私に貴方はただ笑っていた。
そして、貴方はやり遂げた。その短い人生を森と私に捧げ、同志を集め、交渉を続け、とうとう森を保護する法を作り上げた。
こうして森と私は貴方の言葉とおりに守られ、穏やかに暮らせるようになった。
たった一つ以前と変わったのは、私の視線の先、森の様々な光景に、思い出の中の貴方の姿が映り込むようになったこと。
お前「優しくしないで」
5/2/2024, 12:23:19 PM