たろ

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【ミッドナイト】

そこには、深い深い夜が横たわっている。
とても静かな、静けさが酷く煩いくらいの静寂に包まれて、あなたの寝息が小さく音を立ているのを、ぼんやりと眺めていた。
(ずっと一緒だったけど、もっとずっと傍に居られるんだ…。)
無防備な寝顔を見下ろして、くすりと笑う。
「…幸せ、だなぁ。」
嬉し過ぎてドキドキしたり、幸せ過ぎて息が詰まったり、心配し過ぎて怖くなったり、きっと今までと変わらない毎日が続いていく。
そこに、この人と同じ場所に帰る幸せが、追加されるのだ。
「はぁ…。幸せ過ぎて、溺れそう。」
これからは、お泊りではないのだ。この人が帰る場所に自分も帰って良いのだ。
「…かっちゃん。大好き、愛してる。」
深い眠りの中に沈んでいるあなたの耳元に、そっと囁く。
「うぐ、恥ずかしい…。」
長年の間に巫山戯て言い続けた言葉は、心を込めて言えずにいる言葉になってしまっていたのに、するりと漏れて出てきた。
「夜、怖い…。」
ごそごそと大好きなあなたの隣に潜り込んで、背中をむける。
これ以上向き合っていたら、もっと余計な事をして、隣で眠るこの人の眠りを妨げてしまう。

真夜中は、人を正直にする。
稚拙な欲望を露わにして、暴いていく。
溜め込み過ぎて零れ出す想いを、晒してしまう。
それらは、真夜中の闇に融け込んで揺蕩い、朝日に浄化される時を待つようだった。

1/27/2024, 1:03:25 AM