題 あなたへの贈り物
「はい、これ」
私はあなたへと包みを差し出す。
あなたは一瞬びっくりした顔をすると、ニッコリ輝く笑顔で私を見る。
「えっサプライスプレゼント?ありがとう、何かな?」
私は笑顔で言う。
「さぁ、なんでしょう?当ててみて」
あなたは嬉しそうな笑顔で考える。
「なんだろう。君が選んでくれたものなら何でも嬉しいけど、そうだなぁ、ワイヤレスイヤホンとか?こないだ無くなったって話したから」
「残念、ハズレだよっ 」
私は彼にそう宣言すると、そのままプレゼントに目を落とす。
「開けてみて?」
私の言葉に彼は頷いて、包みに手をかける。
「うん」
あなたの笑顔が包みを開けた瞬間強ばる。
「こ、これ⋯」
「ああ、これ?あなたの部屋で見つけた他の女性のピアス、髪留め、口紅とかの忘れ物だよ。たーくさんあったから、抜粋して包んでみました」
私の歪んだ笑顔を引きつった笑顔で見つめる彼氏。
「いや、違うってこれは⋯」
「何が違うんだぁ~~~!!!」
彼の部屋に一際大きい叫び声が響く。
「あのね、最初は目をつぶろうとしたよ。出来心かもって思ったしね。でも、どんどん増えるし、あなた悪びれることなく知らん顔だし二股かける気満々だったし、もう限界よっっ!」
私の抗議と、ふだんそんなにキレない姿に怯えた様子の彼。
「その贈り物はぜんぶあげる。てか、返してあげたら?私もあんたなんかとは別れるからっ」
私はそう行って玄関に向った。
彼は急いで立ち上がると私の手を掴む。
「ま、待って、別れたくない、他の子は遊びだから、君だけが本命なんだ」
「はぁぁぁぁぁ???」
彼の言葉に私の中に怒りがまた再燃する。
「本命ほったらかして他の人と遊んで、イチャイチャしてっ、それって本命である意味なんてないっ。そうやって本命って思う人を悲しませるあんたなんか、私はいらない」
言ってやった。
すごい爽快感。
心に清涼な風が吹いてるようだわっ。
彼は私の勢いに圧倒されたのか、口をつぐんでいる。
そのまま私は彼の手を振り切るとドアを出た。
「さよなら」
不思議と涙も出てこなかった。
他の女の痕跡を長い間見ていたからかな。
私が大事にされてないって分かっていたからだ。
だから、悪縁が切れたような気がしていた。
負の遺産のプレゼントも渡せたし、新しい恋でも探そっ。
私は自分にそう言い聞かせると、帰宅するために駅までの1歩を踏み出した。
1/22/2025, 11:11:55 AM