わをん

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『旅路の果てに』

長い長い旅の終わりに待ち受けていた魔王をついに打ち倒した。けれど喝采も勝鬨も上がることはない。共に戦った仲間は物言わぬ骸となり、ただ一人生き残った僕も倒れたが最後、起き上がることができなくなった。体からじわじわと血が抜けていくのがわかる。傷を癒やすことも仲間を生き返らせることも今の僕には叶わない。
かつて立ち寄った村々のことを思い出す。みな一様に不安の中で暮らしていたが、今はもう何にも怯えなくてもいいのだと教え広めたかった。旅の始まりとなった城下町で暮らす母親にただいまと言いたかった。勇者からただの街人になったその時に、仲間のひとりに言おうとしていたことはついに言えずじまいになってしまった。後悔の涙にまみれながら、意識が遠のいていく。

2/1/2024, 3:56:51 AM