はす

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酸素

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

百年前の夏目漱石ですら、こんな風に言っていたのだから、往々にして世の中そう変わらないものである。とにかく、この世は生きにくい。でも、私が世渡り下手なだけかもしれない。
子供の頃の方がもっと世界は鮮やかだったと、今ではしみじみ思う。度の低いレンズから高いレンズに変えた時のように、今では、よりくっきりと、見たいものも見たくないものも見える視力を得てしまった。解像度の低いままの方が、世界はきっと綺麗だった。

子供の頃で思い出したのは、地球温暖化が叫ばれてもう何年経ったかな、ということだった。物心ついた頃から温暖化、温暖化と学ばされていた気がする。二酸化炭素は増え続けて、酸素は、どうなのだろう。そちらの方面に明るくないから分からない。あの頃から地球は変わっただろうか。

息がしずらい、と思う。息の苦しい場所が、段々と増えて来たように思う。その場所に止まったままでは、不要な二酸化炭素ばかり増え続けて、必要な酸素ばかりが消費されていく。風通しが必要なのだ。どこか遠くへ行きたい。出来れば、酸素一杯の森の中とか。でも、それは難しいだろうから、少しでも、息のしやすい場所へ行きたいと願う。生きるために必要な酸素を求めて。

5/15/2025, 1:03:53 AM