在葉

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 狭い部屋

 午後の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。アパートの前の道を車が時々通り過ぎる。大人たちも子供たちも仕事や学校で活動しているはずの時間に、まどろみの中で夢の続きを追いかけていた。
 翼も無いのに空を飛ぶ夢だ。風が気持ちいい夢を見たのははじめてで、もっと、もう一度、と目を閉じ続けた。断続的なまどろみは、あとわずかしか続かないだろう、それでも、

 ピンポーン

 …不満と不快からくる理不尽な怒りを、ドアの外の労働者にぶつけるのは違うだろう。だが、いや、だからこそ、申し訳ないが狸寝入りをさせて頂く。
 念入りに数分ほど布団にくるまってじっとしておく。それから盛大なため息と共に起き上がり、しかめ顔で仕方なく目を開ければ、いつもの狭い部屋だった。
 翼は無いし空も飛べない。
 車でスーパーに行こう。寿司買ってお酒飲もう。ゲームつけて旅に出よう。夢の続きは、仕方ない、望めばきっと、またそのうちに。

6/4/2023, 5:25:10 PM