#部屋の片隅で
部屋の片隅で、私はよく泣くことがあった。それは悲しいことがあったから、とか、辛いから、とかではなく。
ただただ今の気持ちの整理とか、そんなことで心がいっぱいいっぱいになって、それが溢れるように泣いていたのだ。
何がいいとか、何が悪いとか、そんなの今の自分にはよく分からない。子供のように、嗚咽を漏らして、声を上げて、母親に泣きつくことはもうできない。
それでも、声を出したくても押し殺し、嗚咽を漏らしそうになっても手で塞ぎ、涙は母の優しい手のひらで拭ってもらわずに、自身の手首の袖で拭うことしか出来ない。
子供の頃は、遊んでいたリビングの真ん中で、道路の片隅で、寂しくては泣き、転んでは泣き、母に縋っていた幼少期。
だが、今の自分は、あんなに泣きついていた母にバレないように、気づかれないように、誰にも見つからないように、部屋の片隅で泣くしかないのだった。
透明なシミと赤いシミは、部屋の片隅で静かに時が過ぎるのを待つばかり。
12/7/2023, 4:24:13 PM