ラフロイグ

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「願いが一つ叶うならば、何を願う?」
ゴリゴリのリアリストの父が私に問いかけた。
とても意外な問いかけに私は何だか可笑しくなって吹き出した。
「俺だって、たまには妄想の世界の住人となる時もある」
そう言うと、少しばかりぶすくれながらビールを飲み干した。

可愛いとこあるじゃん。

「んー。それじゃ、私は願いを10個に増やしてもらう!」
父はピタリと動きを止め、暫し私を見据えた。
「なるほど…そうきたか、無粋なヤツめ」
動き出した父は、空になったグラスにビールを注ぎながら片方の口角を上げ、こう続けた。
「ファンタジーの世界にも幾つか決まり事があってだな…お前のその願いは…一般的なファンタジーの世界では禁忌とされている」
「はぁ?おかしくない?ファンタジーでしょ?」
「間違いなく注釈が入る事象だ。ファンタジーも所詮は人の手によって生み出されている産物だからな。都合ってもんがある」
「…つまんなっ!」
「しょうがない。ファンタジーにも枠組は必要だ。何でもかんでも許されたなら世界感が崩壊してしまうだろ?」
「なるほどね、その世界の自由度は作者の力量に直結するってことね…ん?という事は、ここで言う作者はパパよね?」
「まぁ、そうなるな」
「世界…狭っ!そして、浅っ!!」


——— 願いが一つ叶うなら ———

3/10/2025, 1:30:02 PM