なつめぐ

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『蓋をする』


「これでいいんだよ、こういう運命だったんだ」

この言葉を聞いた彼の顔が歪む。顔を横に振った彼の目から涙が零れた。
……彼の涙なんて初めて見た。でもやっぱりあんまり見たくはないかな。
大丈夫だよの意味も込めて私は彼に微笑みを向けた。

「さぁ!さぁ!!ひと思いにやってしまいましょう!彼女の悪しき魂を解放してあげるのです!!」

耳障りな声が聞こえた。…これが最後に聞く言葉とか嫌だなぁ……。
彼の右手が、刃が上がる。私に狙いを定めて。
もう一度彼の目を見た。彼の瞳に映る私は酷い顔をしていて、思わず笑ってしまいそうだった。……これが私の最期か。
私は込み上げてくる恐怖と涙に蓋をするように目を閉じた。

「…バイバイ」

最後に見た彼の顔を、瞳を思い出しながら、私は彼の刃を受け入れた。



【君の目を見つめると】

4/6/2026, 4:01:54 PM