ちどり

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朝方はまだうすら冷えるこの時期。
私は公園の桜の樹の下で、人を待っていた。

見上げると、色濃くなった桜が視界を埋め尽くし、
隙間から見える薄雲の白が、キャンバスのようだった。

待ち人を待つ間、手持ち無沙汰を紛らわせるため、いつものように思考の海に思いを馳せる。

桜というと、どこか儚い印象がある。

桜自体が別れの季節に咲きがちなのが原因の一つだが、
散る姿が命に例えられたり、樹の下には死体が埋まっていて、その血で桜はピンク色なのだなんて都市伝説もある。

満開の状態でさえ、どこか寂しげに見えるのは気のせいだろうか。

花見の名目で宴会をするのも、もしかして寂しげに見える桜を励ますためかもしれない……なんて想像するのだ。

まぁ十中八九、人間が単純にお祭り騒ぎしたいのと、酒が飲みたい都合によるものだが。

そうやって可愛げもないことを頭の中でこねくり回していると、待ちかねた人影が公園に入るのが見える。

今まさに花弁が降り注ぐ樹の下で、私は彼に……。
いや、何を伝えるかはご想像にお任せしよう。

⊕桜散る

4/17/2024, 10:36:59 AM