いぐあな

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300字小説

風花の友達

 子供の頃、私が住んでいた田舎の村には、更に山の奥に女性だけが住む村があった。色白に漆黒の長い髪の美しい女性ばかりの村で私はそこの村長の娘、雪ちゃんとお友達だった。
『冬になるとね、お母さん達、村の大人は雪を降らせに行くんだよ』
 冬が近くなると雪ちゃんは不思議なことを話していた。

 過疎化の波で村から人が減り、私の家も街に引っ越した。伯母の話では去年、とうとう村は無人になったらしい。
「……雪ちゃん達はどうしてるかな?」
 まだ、あの山奥の村にいるのだろうか? 冬晴れの空にふと風花が舞い、黒髪の女性が通り過ぎる。
「……雪ちゃん……?」
 女性が振り返り、笑みながら手を振る。冷たい風と共に、雪華が私の目の前に舞った。

お題「冬晴れ」

1/5/2024, 11:11:44 AM