茶園

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短い小説 『子猫』

 「可哀想に、この猫、棄てられてるんだってね」

 声を聞き、声のする方へ顔を向けた。
 そこには、小さな段ボールがあった。段ボールには小さく、“生後1ヶ月です”と書かれていた。
 段ボールは見た感じ新しく、置いてからまだ2、3日しか経っていなさそうに見えた。
 二人の人間は同情だけして去っていった。段ボールからか弱い声が聞こえる。たまらず段ボールの方に駆け寄った。
 子猫一匹。虎猫であった。生後1ヶ月で棄てるとは、とても育てる余裕がなかったのだろう。酷いことをするものだとは言えないが、この子猫のことを考えると、もう少し良い方法があったのではないかと思ってしまう。
 両手でゆっくりと持ち上げ、抱いてみた。肋骨が微かに出ている。明らかな栄養不足だ。このままでは取り返しのつかないことになるだろう。

 拾いたい気持ちは山々だが、うちにも飼えない事情がある。うちの家族で動物が嫌いな人がいるのだ。見つかったら、大変なのは目に見えている。
 だが…

 こっそりと飼えば、大丈夫かもしれない。
 リスクはあるが、不可能ではない。

 そう思い、子猫を服の中に入れ、どうするか考えながら家へ帰る。

11/16/2022, 8:44:02 AM