音階を追うと見えてくる景色があった。その景色は雄大で、穏やかで、それでいて寂しさが滲んでいる。ああ、これが君の見ている景色なのだな、と吐息をして目を開けばやっぱり淋しげに笑う彼女が居た。「どうだった?」不安げな声色である。私は彼女の不安を少しでも払拭してあげたくて快活に笑った。「わたしは大好きだよ」「そっか、それなら良かった」釣られて笑った彼女のしなやかな指が鍵盤の上で踊る。彼女の音が、彼女のメロディーが、私の唯一の寄る辺だった。
6/13/2025, 3:01:16 PM