さぁ、耳を澄ませて
1、2、3!
魔法のステッキの先から夜空へ
ポーンっと流れ星を生み出した
だけど誰かの願い事
一言だって聞こえない
「悲しい時代になったよなぁ」
私の隣でお父さんが、しみじみと言った。
「そうなの?」
「ああ。昔はそうやって流れ星を作ったら、すぐに願い事が、いくつもいくつも聞こえてきたんだ。夜空の星の数ほどな!」
「なんだか、叶えてあげるのも大変そうだね」
「そうさ。だけどやりがいがあった。だからみんな、競うように流れ星を夜空へ放ったものさ」
再びポーンとステッキ振って
私が作った流れ星
街の明かりに飲み込まれ
もうどこにも見当たらない
「あーあ、やっぱり消えちゃった」
「また明日がある。明日は願い事をしてくれる人がいるかもしれないぞ。さぁ、そのためにも今日はもう帰って、ぐっすり眠ろうか」
「はーぁい」
お父さんと手を繋ぎ
テクテク歩く帰り道
私はこっそりステッキ振って
小さな星を生み出した
〝私も誰かの願いを叶えられる日が来ますように〟
私の願いをのせた星
やっぱりすぐに消えたけど
心がポーンと弾んだ気がした
2/10/2025, 12:28:31 PM