外の世界を見てみたかった。
美しい青空、緑豊かな森、そして、何処までも広い海。
けれどこの鳥かごのような城にいる限り、私は自由に
見ることも叶わない。
私は、いわゆる貴族の娘で両親に外は危ないといわれてずっとここに閉じ込められている。
きっと両親は、私の事を閉じ込めて支配したいのだろう。だから、この本しかない部屋に私を入れた。
逆らうこともできず、毎日本を読んで夢想している。
本は好きだ。いろいろな世界へ私を連れて行ってくれるから。
例えば、一人の少年がハラハラする冒険をしたり、運命の相手に出会う恋物語。
なかでも私が一番好きなのが───
鳥かごの中で生きていたお姫様が幼い頃から好きだった王子様によって救けられて自由になる話だ。
まるで、自分の事のように感じて何度でも読める。
「私にも、こんな王子様が現れないかな。」
決して叶わないと分かっていても呟いてしまう。
自分の未練がましさに笑ったその時。
「なら、僕が君の王子様になろう。」
急な声に驚いて振り返ると、そこには美しい青年がこちらに手を伸ばしていた。
「あなた、誰?」
「君を自由にするための王子だよ。さあ、行こう。ここから出なければ君は一人きりだ。そんなの嫌だろう?」
「────うん!」
例えこれが夢だとしても、私は行きたい。
こんな暗い場所で生きるのはうんざりだから。
────そして、新たな物語が始まる。
『鳥かご』
7/26/2023, 8:35:38 AM