新しい地図
「ねぇねぇ、これ見て!新しい宝の地図!」
その目自体から光を放っているのではないかと勘違いさせるほどの勇者の眩い瞳が古びた地図に向けられていた。元の文字が茶色に滲み、端は焦げたように黒ずんで所々破れたいかにもな宝の地図。
「えー!いいね、お宝探しに行く?」
「よっしゃ、冒険やー!」
意外と乗り気な魔法使いと最近暇だったから久々の冒険にテンションが高い遊び人。勇者と3人でわいわいと地図を囲んでいる。一方で、難色を示しているこちら3人。
「前の冒険も結構みんな危なかったしもうちょっと回復してから行くべきじゃない?」
「えー、ほんとそうだよね。てか自分のお気に入りの弓壊れちゃったしもうちょい待って欲しい。」
石橋を叩き切ってから渡らずに引き返す慎重派の僧侶とマイペースな弓使い。しかし、今回に限っては弓使いにとって一番の武器が使えないんだから今は無理というのはマイペースではなく当たり前の主張だ。否定されてもまだ「えー行こうよー」とかいいながら口を尖らせている勇者に問いかける。
「てか、どっから持ってきたの?それ。」
「商人のおじさんが宝の地図が今なら半額だって言ってたから買ってきたの!」
「え、それ大丈夫?」
「なんで?」
「本物の宝の地図ならもっと高く売っても買う人いるだろうし、なんで半額なってるのか分かんないし、単純に怖いじゃん。信憑性ある?」
「うわ、確かに…」
「…明日商店行って確認してみよ。」
翌日、商店に行って入手経路や値段などの理由を厳しく問い詰めたところ、やっぱり店主が作った嘘の地図だったとわかった。どうやらうちの勇者以外に騙されてくれた人はいなかったらしいし、被害も無かったからとりあえず今回ばかりはきつめに説教をして終わらせた。危ない危ない。ありもしない宝のために色々消耗するところだった。これほどまでに自分が賢者で良かったと思ったことはない。商店を出た後、せっかくみんな集まってるしこのまま帰るのもなーという流れで、返金されたお金の一部で野菜とお肉を買って僧侶の家で鍋をした。たまにはこんなパーティーがあっても良いだろう。
4/6/2025, 11:03:43 AM