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【みかん&一年間を振り返る】

「今年も早かったよな」
こたつでじんわり温まり、テレビを見て談笑している時に、ふと君はそんな事を言った。
今年は特にこれといった大きな事をしていないからなのか、確かに早かった気がする。
「そうだね。もう新しい年が来るなんて……少し寂しいな」
みかんの周りについている白い皮を剥がしながら、僕は呟いた。
寂しい、と言ったのは本当だ。
君との時間が、どんどん失われるような気がして。
だいたい僕は人間とか、そういう寿命の短い生物じゃない。
けど君はそうだ。
それは仕方のない事……と割り切ってはいるつもりだったが。
「ま、来年は早く感じないような、デッカいなんかが起こるといいけどな」
「……そうだね」
ある程度みかんの皮を剥き終わると、僕はみかんを一房手に取り、口にした。
……このみかん、酸っぱいなぁ。
「お、綺麗に剥けてんじゃん。一つくれよ」
「いいけど……それあんまり甘くないよ」
と、言い終わる前に、君は食べてしまった。
「あー、確かにハズレだなこれ!」
お前、運悪いな!と腹を抱えて笑われた。
その様子に、僕もつられて表情を崩してしまう。
あぁ、これがいつまでも続ければいいのに。
「……君はこれからも、一緒にいてくれるかい?」
ふと、口から溢れた。
突然の言葉に、君の、鳩が豆鉄砲を食らったような顔が見えた。
「なんだよ急に」
「いや……ちょっと、聞きたくてね」
自分でも下手な嘘をついたな、と思う。
どうせ君が、僕よりも先に旅立つ事は分かっている。
けど知りたかった。君がどう答えてくれるのか。
「当たり前だろ?俺はずっとお前の側にいる。お前が鬱陶しくなるくらいにはな」
ニッと口角を上げ、元気を持った声で言う。
「……そうか。ありがとう」
……やっぱり、先の事を考えるなんて、杞憂だったかな。
この笑顔を見ると、そう思えてきた気がする。
今は、この時間を楽しもう。
僕は内心笑みを浮かべて、そう思った。

12/30/2024, 2:00:56 PM