薄墨

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鉤のような嘴が、鳩の胸を引きちぎっていた。
黒々とした爪が、がっしりと翼を掴み、獲物を固く固定している。
引き裂いた肉片を啄んでいた嘴が不意に持ち上がる。
先の方がぬらりと赤い血液に濡れて、光る。
鷹の首の動きに合わせて、羽毛がパッと舞い上がる。
赤が染みた羽根が、緩慢にゆらゆらと揺れながら、地面に落ちる。

正義とか、悪とか、法律とか、素知らぬ顔で、鷹は鳩を貪っている。
生きるために、獲物を引き裂き、食らっている。
揺れる羽根が、まるで生きているように舞い上がり、地面に落ちて沈黙する。

私はしばらく立ち尽くしていた。
ショックだったのだ。
鳩が無惨に肉に変えられていく姿が。
そして、私が日常的に行っている“食べる”ということの本質は、目の前で繰り広げられているこの鷹の行動である、ということが。

良いも悪いもなく、鷹は懸命に食事をしていた。
血に濡れ、揺れる羽根を引きちぎり、さっきまで生きていた鳩を食べていた。

10/25/2025, 1:45:47 PM