雪がとけちゃう。わたしは眠りからさめた。
わたしを包む、お母さんの大きな翼から、ズリズリ、わたしのちいさな翼をだすと、スーっと冷たい風が触れて、翼がかたく縮んじゃった。
でもいかなきゃ。
黒いわたしのちいさな頭を、黒い全身を、ほそい足を出して、お母さんの顔をみる。
わたしにそっくり。まだねてる。
さ、いよいよ外に出る。
目の前には、細長い四角形型に漏れ出す、白い光と白い地面!とってもきれいで、わたしの白い息すらわずらわしい。
そして四角形型からわたしは落ちた。
白い地面が目の前をおおう。寒さに怯えるわたしの翼!
地面から頭をそらせ、翼ではばたく!
「ジ、ジ、ジ……!」
わたしは鳴いた。
白い、冷たい地面からグングン離れる、ああ、さむい!
つめたい指先、長い爪先さえ凍りついたような、このかんじ!
わたしは飛んだ。
鳥のように、綺麗にまっすぐ飛ぶことはできないけれど、ずっとずっと、たのしそうに飛べる。わたしはこの飛び方がすき。
「ジジジ、ジジジ、ジジジ」
飛びながら、後ろ足を雪に触れさせてみる。
ふしぎなかんじ!新な芝に触れたときのような、ばらの花のくきを握っちゃったときのような……!
思わず高く鳴いちゃった、その時反響する音があることに気がついた。
目の前の、みどりに白に茶、と色とりどりな岩がある。そこにいる!
すぐ飛んで、岩に親指をひっかけてしがみついた。
てっぺんにいるカタツムリは、わたしを見下げて頭をふってくれた。私も耳をクイクイ動かして、返事を返す。
わたしのちいさな友人。また来年も、雪といっしょにわたしのちいさな友人はあいさつしてくれるだろうか。
12/16/2023, 1:34:29 PM