27(ツナ)

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秘密の標本

人は強く禁止されると反発したくなる。
そこは立ち入り禁止の父の書斎。
県外で学会があるらしく今日は終日留守だと聞いていた。
書斎の鍵の隠し場所は事前に調べておいたので、
夜更けに母の就寝を確認し、静かに父の書斎へ侵入する。
室内を探るが、特に怪しいものもなく当てが外れたなと自室に戻ろうとした時、何か箱のようなものを落としてしまった。
鍵がかかっていたが落ちた拍子に古びていた錠が壊れ中身が飛び出した。

焦って元に戻そうと拾うと人の手や顔の一部のようなものだった。
人体模型の一部かとまじまじ触っていると、あることに気づいた。
「……これ、本物だ。本物の、人間の、もの。」
ガチャと書斎の扉が開く。
「…そうだ。本物の人体の標本だ。」
背後から、今日は居ないはずの父の冷徹な声が聞こえてきた。

11/2/2025, 11:52:31 AM