ねけめ

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お題無視
akkrにじそうさく
「はは、もう夏だねぇ〜…」
大きくて骨ばった手でパタパタと仰ぎながら、彼は言う。七月上旬というのに、八月のような暑さの昨今。地球温暖化のせいだとニュースは言うが正直ピンと来ない。ただ、この暑さのせいで夏バテしたアニメーターが多くこっちも迷惑を蒙っているので、本当に勘弁して欲しいところだ。
「うん、立ってるだけで熱中症になりそう」
「若全身真っ黒だもんね」
そうだ、俺は服がオールブラックのせいで他の人の数倍は日光を集めているんだろう…
「黒以外の服も買おうとしてるんだけど似合わなくてさ」
これが本心である。これ以外に言いようがない。
「へー。ならさ…ちょっとまってて!!」
彼はそう言って近くにあった雑貨屋に行ってしまった。
いやおい、監督だけ涼しい店内に行くなよ。と思いつつあとを追いかけるように雑貨屋に入るとやはり外とは比べ物にならないほど涼しかった。歩く気力がないのでそのまま入口付近で待っていると、なにやら沢山買ったらしくトートバッグが膨れていた。
「何買ったの?」
「ふふ、若にいっぱいしてもらってるから感謝の念も込めてね。じゃじゃーん!」
監督が出したのは日傘なり、冷感アームカバーだったりと暑さ対策系のグッズだった。
「……俺に?」
「うん、若に」
「そっか、ありがとう。でも日傘なんて…女々しくないか?」
よく聞くあれだ。でもそれに監督はピンと来ないようで
「日傘だけで女々しい?なんで?」
と首を傾げていた。知らないんだ……。ならいいや。
いや、というか。
「監督は?いいの?」
そう聞くと何故か監督はドヤ顔になり、いつも俺がしているように腰に手を当ててドヤりだした。
「ふふん、私は暑さに強いからね!!寒さには弱いけど!」
あー、これ絶対熱中症になるやつだ。馬鹿かこの人は。
「……馬鹿なの?」
つい本音がでた。すると監督は頬をふくらませながら、
「嘘だし。私もちゃんと買ったし」
と言いトートバッグから徐にアームカバーとハンディファンを出した。──ちゃっかり色違いだ。
「勝太郎って、ほんとそういうとこが可愛いんだよな」
聞こえるか聞こえないかギリギリの声で呟いて監督の方を見ると、暑さとは別の熱を帯びた顔でこっちを見ていた。

7/7/2025, 5:04:24 AM